「歯を失ったままでも、特に困っていないから大丈夫」とお考えではありませんか?
入れ歯を作ったものの噛みにくいといった理由で、使用していないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
実は、歯を失った状態のままにすることは、お口の問題にとどまらず、全身の健康や生活の質にまで大きく影響することがわかっています。
「しっかり噛めること」と健康寿命には関係があり、歯の機能を回復することは大切なことなのです。
今回は、インプラント治療と健康寿命の関係についてお話しします。
歯を失うと、食べ物をしっかり噛むことが難しくなります。
噛むのが難しくなると、無意識のうちにやわらかいものを選んで食べるようになり、食生活が変化してしまいます。
たとえば、硬い野菜や肉類を避けるようになり、炭水化物中心の食事になってしまうケースも少なくありません。
このような食生活の偏りは、栄養バランスの乱れを引き起こし、体力や免疫機能の低下につながります。
さらに、「噛む」という行為には、「食べる」「噛み砕く」といった役割だけではなく、脳への刺激を与える役割もあるのです。
しっかり噛むことで脳が活性化され、認知機能の維持にも関係していると考えられています。
つまり、「噛めない状態」はただ不便なだけではなく、全身の健康に影響を及ぼすことになるのです。
歯の数と咀嚼(そしゃく)能力、要介護認定との関係を調べた研究によると、歯の数が19本以下の場合、20本以上ある方と比較して要介護になりやすいことがわかっています。
つまり、あまり噛めない人は何でも噛める人と比較して要介護になりやすく、歯の数や噛む力が健康寿命に関係しているといえます。
参考:顎口腔機能と健康長寿
https://www.icd-japan.gr.jp/pub/vol47/14-vol47.pdf
インプラント治療は単に失った歯を回復するだけではなく、かみ合わせや噛む力を含めてお口の機能を取り戻す治療です。
歯を失った部分をそのままにしておくと、かみ合わせが乱れます。
歯には1本1本それぞれ役割があり、周囲の歯と支え合いながら、バランスを保っています。
どの歯も不要なものはなく、それぞれが大切な役割を担っているのです。
かみ合わせのバランスが崩れると、残っている歯に過度な負担がかかり、さらなる歯の喪失を招く可能性があります。
また、噛む力が均等に分散されなくなることで、顎や筋肉にも負担がかかり、食事の際に疲労感を感じやすくなります。
インプラント治療は、歯を失った部分の顎の骨にインプラント体を埋め込み、上部に人工歯を装着することで、歯を補う治療です。
人工歯を装着する際は、かみ合わせのバランスにも考慮して、しっかりと噛めるように整えます。
その結果、食事がしやすくなるだけでなく、残っている歯を守ることにもつながります。
インプラント治療によってかみ合わせのバランスや噛む力が回復することで、さまざまなメリットが期待できます。
しっかり噛めるようになると、食べられるものの幅が広がります。
たとえば、これまで避けていた硬い食材や繊維質の多い食品も無理なく食べられるようになり、自然と栄養バランスが整っていきます。
栄養状態が良くなることで、筋力の維持や免疫機能の向上につながり、日常生活の質も向上していきます。
「フレイル」とは、加齢に伴い心身の機能が低下し、要介護状態に近づいた状態のことです。
フレイルの大きな要因が、低栄養と筋力低下です。
そして、その背景には「噛めないこと」が関係しているケースも少なくありません。
インプラント治療によって咀嚼機能が回復すると、しっかり食べられるようになり、栄養状態が改善します。
その結果、筋肉量の維持や体力の向上につながり、フレイルの予防が期待できるのです。
近年の研究では、「噛む機能」と認知症との関連にも注目が集まっています。
噛む動作には、脳の血流を促進し、神経活動を活発にする働きがあります。
そのため、咀嚼機能が低下すると、脳への刺激が減少し、認知機能の低下につながる可能性があると考えられています。
残っている歯が9本以下では10本以上と比較して、認知症発症のリスクが高いという研究結果からも、インプラント治療によって噛む機能を回復させることで、認知機能の維持にもつながる可能性があるのです。
「噛むこと」と「転倒」は、一見関係ないように思われるかもしれませんが、じつは密接な関係があります。
歯が19本以下で義歯を使用していない方は、20本以上歯がある方と比べて、転倒のリスクが2.5倍高くなるという研究結果があります。
かみ合わせが安定すると、姿勢やバランス感覚が整いやすくなりますが、かみ合わせのバランスが崩れていると、身体も不安定になり、転倒しやすくなることがあるのです。
また、しっかり食べて栄養を摂ることで筋力が維持されるため、転倒予防にもつながります。
参照:J-STAGE|転倒予防医学研究会「歯科から考える転倒予防」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tentouyobou/5/1/5_23/_article/-char/ja/
健康寿命とは、「介護を必要とせず、自立した生活を送れる期間」のことです。
この健康寿命を延ばすためには、運動や食事、生活習慣の改善に加えて、「しっかり噛める状態を維持すること」が必要です。
歯を失ったままにせず、適切な治療で機能を回復することは、将来の健康への投資という考え方もできます。
インプラント治療は、単に見た目や噛みやすさを改善するだけでなく、全身の健康や生活の質の向上にもつながる治療です。
歯を失うことは、お口の中だけの問題ではありません。
噛む力の低下は、栄養状態や体力、さらには認知機能にまで影響を及ぼす可能性があります。
インプラント治療によって、噛む力やかみ合わせのバランスが回復し、
といった、さまざまな健康効果が期待できます。
ただし、健康寿命を延ばすためには、「インプラント治療を受けること」だけでなく、その後の維持・管理も非常に重要です。
せっかく噛める状態を取り戻しても、適切なメンテナンスが行われなければ、その機能を長く維持することは難しくなります。
インプラント治療後は、天然の歯と同様に、毎日の丁寧な歯磨きや定期的な歯科医院でのメンテナンスが必要です。
特に、インプラントは、虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎と呼ばれる炎症を起こすことがあり、進行するとインプラントの脱落につながる可能性もあります。
そのため、歯科医院での定期的なチェックに加えて、ご自宅でのセルフケアをしっかりと行うことが大切です。
日々の積み重ねによって、お口の健康を守り、結果として全身の健康維持にもつながっていきます。
当院は、インプラント治療経験が豊富な歯科医院です。
インプラント治療に年齢的な上限はありませんが、加齢に伴い全身状態や認知機能が低下すると、十分なセルフケアが難しくなることがあります。
その結果、お口の環境が悪化し、インプラント周囲炎のリスクが高まる可能性には注意が必要です。
当院では、将来的な生活環境の変化も考慮して、お一人おひとりのお話をおうかがいし、適切な治療法をご提案します。
「しっかり噛めること」は、毎日の食事を楽しむためだけでなく、健康で自分らしく生活するためにも大切なことです。
歯をどのように補うかお悩みの方や、入れ歯が合わなくてお困りの方は、お気軽にご相談ください。