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歯周病になると歯が抜けるということは、比較的よく知られていますよね。
歯周病は歯周病菌による炎症性疾患です。
歯周病になると、歯ぐきが炎症を起こして、腫れや出血といった症状があらわれます。
炎症が悪化すると、歯を支えている骨が溶かされて歯が抜け落ちます。
それだけでなく、お口の中で増殖した歯周病菌や歯周病菌が生み出す毒素が歯ぐきの血管に入り込み、血液とともに全身にまわって影響をおよぼすのです。
歯周病は、糖尿病、動脈硬化、骨粗しょう症、心疾患、脳疾患などさまざまな全身疾患と関係があるとされていますが、ここでは「誤嚥性(ごえんせい)肺炎」と歯周病についてお話しします。
誤嚥性肺炎は、シニア世代にとっては死亡原因となる可能性のある病気の一つです。
じつは、誤嚥性肺炎はお口の環境と関係が深く、予防するためにはしっかりとお口のケアを行う必要があります。
誤嚥性肺炎とは、食べものや唾液が誤って気道に入る「誤嚥」がきっかけで、細菌が肺に入り込んで炎症を起こす「肺炎」です。
誤嚥を起こしやすいのは食事のときですが、睡眠中に唾液が肺に流れ込んで起こることもあります。
私たちは、通常、唾液や食べものが気管に入りそうになると、無意識的にむせて、誤嚥を防いでいます。
けれども、年齢が上がると、筋力が低下して食べものを飲み込む「嚥下(えんげ)」の機能が衰えることに加えて、誤嚥を反射的に防ぐ機能も低下して、誤嚥しやすい状態となるのです。
私たちの口の中には、数千億個の細菌が存在しています。
お口の中が不衛生な状態が続くと、細菌はさらに増殖します。
細菌が多い状態で誤嚥してしまうと、細菌が気管から肺に流れ込む可能性が高くなるのです。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌にはいくつかの種類がありますが、その中でも一番多いのが「歯周病菌」とされています。
誤嚥性肺炎を起こす細菌の多くは、酸素のないところを好む「嫌気性菌」です。
歯と歯ぐきのすき間である歯周ポケットの内部は酸素が少なく、歯周病菌にとっては居心地のよい空間で、どんどん奥へ奥へと入り込んでいきます。
歯周病は、ミドル世代以降の方がかかる病気というイメージをお持ちの方も多くいらっしゃるでしょう。
実際に、2022年の歯科疾患実態調査によると、歯周ポケットが4mm以上ある方の割合は、年齢とともに増加傾向にあります。
65歳以上は50%を超えていて、もっとも割合が高いのが、75〜79歳の60.5%です。
健康な状態の歯周ポケットは2mm以下ですので、4mm以上というと歯周病がかなり進行している状態です。
参考:厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査 結果の概要」表19より
https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf
歯周病は細菌による感染症ですので、免疫機能が低下するとプラークに含まれていた歯周病菌が活発に動くようになり、発症リスクが高くなります。
そのため、免疫機能が下がってきているシニア世代の方は特に注意が必要です。
また、加齢によって生じる歯ぐきの血行不良や唾液の減少が、歯周病を悪化させる要因となります。
年齢を重ねるにつれて、歯周病にかかるリスクは高くなり、嚥下機能は低下するといった状態となり、誤嚥性肺炎が起こりやすくなるのです。
歯周病菌が原因で起こる誤嚥性肺炎を予防するためには、
ことが大切です。
そのためにも、次のことを心がけましょう。
予防の基本は、毎日の歯磨きです。
特に寝る前の歯磨きは丁寧に行うようにしましょう。
就寝中は唾液の分泌量が少なくなるため、寝ている間に誤嚥が起こるケースも少なくありません。
歯ブラシ1本では、歯と歯の間に汚れが残りがちです。
歯間ブラシやデンタルフロスを活用することで、除去率は高くなりますので、積極的に活用しましょう。
ご自身のお口に合うデンタルケア製品を一緒に選ぶこともできますので、お気軽にご相談ください、
年齢が高くなると、唾液の分泌量が低下します。
唾液が少なくなり乾燥したお口の中は、細菌にとって活動しやすい環境です。
細菌の集まりは、舌にも付着します。
舌についた白い物質は「舌苔(ぜったい)」とよばれる細菌の集まりですので、舌ブラシを使ってやさしく丁寧に取り除きましょう。
シニア世代では入れ歯を使っている方も、多くいらっしゃいます。
入れ歯は汚れやすく、雑菌が繁殖しやすいので注意が必要です。
介護が必要な方や、手の力が弱くなってきている方は、ご自身のケアだけでは不十分ですので、介護する方がしっかりと補助してください。
また、ご自身のケアだけでは、すべての汚れを落とすことはできませんので、定期的に歯科のクリーニングを受けるのがおすすめです。
当院では、効果的に歯周病を予防するために、次のような取り組みを行っています。
PMTCは、「専門家による機械を使ったクリーニング」です。
歯科衛生士がポリッシングブラシ、ラバーカップなどと呼ばれる器具を使用して、歯に付着している歯垢を落として、歯の表面を磨きます。
PMTCを行えば、普段の歯磨きでは落としにくい「バイオフィルム」も除去可能です。
表面がツルツルになることで、汚れが付きにくくなり、虫歯や歯周病になりにくい状態になります。
3DSは、「Dental Drug Delivery System(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム」の略です。
お一人お一人の専用トレーを使って、その中に消毒薬を流し込んで上下の歯に装着することで、歯の表面に付着している細菌を減少させます。
3DSを行うことで、歯周病だけでなく、虫歯や口臭予防の効果も期待できます。
健康なお口を維持することで、生活の質は向上します。
歯周病は適切なケアを行えば予防できる病気です。
当院では、年齢や歯周病の進行状態に合わせた治療や予防ケアをご提案しています。
歯周病はお口だけでなく、全身の健康にも関係があります。
今回は、誤嚥性肺炎についてお話ししましたが、糖尿病や心疾患、脳疾患なども、歯周病と関係の深い病気です。
いつまでも健康なお口で、人生を楽しめるようにしっかりとサポートしますので、どのようなことでもお気軽にご相談ください。
西宮市のケイ歯科クリニックは、阪急今津線「甲東園」駅から歩いてお越しいただけます。
また、中津浜線沿いにあり、専用駐車場も完備していますのでお車での通院も可能です。