インプラント治療は、失った歯を補う治療方法の一つです。
外科手術によって顎の骨に直接埋め込まれたインプラント体が、歯根の代わりとなって咀嚼(そしゃく)を支えます。
インプラント治療によって、ご自身の歯を取り戻したような噛み心地で、食事や会話を楽しめるようになったという方も多く、注目を集めている治療法です。
一方で、それほど多くはないものの、インプラント治療後に口臭が気になるようになったという話を聞くことがあります。
インプラントそのものが「におい」の原因になることはありません。
けれども、インプラント周囲の環境が、においの原因になることがあります。
ここでは、インプラント治療後に口臭が強くなる場合の原因と対策についてお話しします。
目次
インプラントは人工物ですので、むし歯になることはありません。
また、においの原因となるような素材は使用されていません。
インプラント治療後に口臭が気になるようになった場合は、次の原因が考えられます。
インプラント治療後にお口のにおいが気になる場合、原因として考えられるのが磨き残しです。
インプラント治療では、歯を失った部分に歯根の代わりとなるインプラント体を埋めて、上部に人工歯を取り付けます。
歯並びやかみ合わせに影響がないように、失った歯と同じような形状の被せ物を製作するのですが、周りの歯との間にわずかな段差やすき間ができてしまうことがあります。
段差やすき間がある部分は、歯ブラシが届きにくく、磨き残しができやすい場所です。
お口の中にある細菌は、磨き残しをエサに増殖し、においの原因となる物質を発生させます。
磨き残しが多ければ多いほど、においは強くなります。
歯磨きが難しい部分も、磨き方のコツをつかめば汚れを落とせるようになりますので、歯科医院でのアドバイスを参考にして丁寧に磨きましょう。
インプラントは、
といった3つのパーツでできています。
インプラント体と人工歯を結びつけるアバットメントは、ネジ状の形をしていて、インプラント体にしっかりとねじ込まれるように取り付けられています。
治療当初はゆるみのない状態であっても、長期間使用しているうちに、ネジがゆるんでしまうことがあるのです。
ネジがゆるむことでできたすき間から、唾液や汚れが入り込み、口臭の原因となります。
歯周病のように、インプラントの周囲組織に炎症が起きている状態が「インプラント周囲炎」です。
インプラント周囲炎のおもな原因は、周囲に溜まった歯垢(プラーク)です。
磨き残しによって歯垢が溜まると、歯周病の原因菌が増殖し、インプラントを支えている骨を溶かし始めます。
インプラント周囲炎になると、歯ぐきが腫れて、血や膿が出ます。
血液や膿は、お口のにおいの直接的な原因です。
さらに、炎症が進行する過程で、細菌は増殖をくり返し、においの原因となる「揮発性硫黄化合物」を生成します。
インプラント周囲炎をそのままにしていると、においがひどくなるだけでなく、インプラントを支えている骨が溶かされて、最終的にインプラントが脱落してしまう恐れがあるため、できるだけ早く発見して治療を行うことが大切です。
特に、インプラントには歯根と骨を結びつける「歯根膜」がなく、骨とインプラント体が直接結合しています。
歯根膜がないことで、細菌が侵入しやすくなっているので、天然の歯よりも注意してケアを行う必要があります。
インプラント治療後に口臭が気になる場合は、次の対策を行ってください。
インプラント治療後に口臭が気になる場合は、歯磨きの方法を見直してみましょう。
インプラントは入れ歯のように外してお手入れする必要がありません。
天然の歯と同じように、1本1本丁寧にブラッシングしてください。
特に、歯と歯ぐきの境目や、歯と歯の間は重点的に磨きましょう。
歯と歯の汚れは歯ブラシ1本だけではすべて汚れを落とすことは難しいため、デンタルフロスや歯間ブラシを活用するのがおすすめです。
人工歯と歯ぐきの境目をキレイにする際には、ヘッドの小さい「タフトブラシ」を使用しましょう。
インプラント治療後は、定期的なメンテナンスが必要です。
毎日丁寧に歯を磨くのはもちろんですが、ご家庭での歯磨きだけではすべての汚れを落とすことはできません。
定期的に歯科のクリーニングを受けて、歯磨きでは落とせない汚れを徹底的に取り除くことが大切です。
インプラント周囲炎は、初期の段階では自覚できる症状がほとんどありません。
そのため、気付かないうちに進行し、悪化しているケースがよく見られます。
定期的に歯科で検診を受けることで、インプラント周囲炎を早期発見することが可能です。
また、定期検診では、
など、ご自身ではわかりにくい部分もしっかりと確認し、異常がある場合は早期に対応します。
さらに、お一人おひとりのお口に合わせたブラッシング指導も行います。
歯の磨き方やデンタルケア製品の選び方などを丁寧にわかりやすくお伝えしますので、毎日の歯磨きに取り入れてください。
定期検診の頻度は、お口の状態によって異なりますが、3〜6ヶ月に1度のペースで行うのが一般的です。
特に気になることがなくても、忘れずに定期検診にお越しください。
気になる症状がある場合は、定期検診を待たずにできるだけ早く受診することが大切です。
お口のにおいによって、インプラント周囲炎やインプラントのトラブルに気付く場合もあります。
口臭はご自身では気付きにくいものではありますが、次の方法でチェックすることができます。
コップや袋に息を吹き込み、においをかいでみてください。
においがきつく感じる場合は、口臭が発生している可能性があります。
デンタルフロスは歯と歯の間の汚れや歯ぐきの下にたまった汚れをかき出すために使用します。
使用済みのデンタルフロスをにおってみて、きついと感じたら口臭が発生している可能性が高いと考えられます。
こまめにデンタルフロスを行うことで、歯と歯の間に汚れがたまりにくくなり、口臭予防につながりますので、積極的に活用しましょう。
お口のにおいはデリケートな問題で、お一人でお悩みの方が多くいらっしゃいます。
口臭がひどくなると、日常生活や人間関係にも支障をきたす場合があります。
口臭の原因が歯周病やインプラント周囲炎である場合は、そのままにしていると、歯やインプラントを失うことになりかねません。
においが気になるときや、ご自身の判断が難しい場合は、できるだけ早くご相談ください。
西宮の「ケイ歯科クリニック」は、阪急今津線「甲東園」駅より徒歩7分と電車でも通いやすく、西宮市以外からも多くの患者さんがご来院されています。
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