インプラント治療では、顎の骨に直接インプラントを埋めて骨と結合させます。
適切なメンテナンスを行っていれば、長く使用していただくことが可能です。
けれども、ごくまれに治療後にインプラントを除去しなければいけないケースがあります。
長い時間をかけて行うインプラント治療だけに、「できるだけ長く使いたい」と考えるのは当然のことです。
ここでは、除去しなければいけなくなる原因について詳しくお話しします。
「インプラントを長持ちさせるための豆知識」としてご参考になさっていただければ幸いです。
目次
メンテナンスにもよりますが、インプラントは治療後10〜15年以上経過しても、上顎で90%程度、下顎で94%程度の方が問題なく使えているというデータがあります。
参考:厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のための Q&A
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shika_hoken_jouhou/dl/01-02.pdf
また、20年以上インプラントを使っている人に向けたアンケートでは「特に問題なく使えている」と回答した人が約76%に達しています。
参考:J-STAGE‐「20年以上経過したインプラント患者のアンケート調査」図7‐現在の食生活についてより
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoi/31/2/31_170/_pdf
このように、寿命が長いというのがインプラント治療のメリットの一つですが、寿命を待たずに除去しなければいけなくなる5つのケースを紹介します。
インプラントの除去が必要となる原因で多いのが、インプラント周囲炎です。
インプラント周囲炎とは、埋めたインプラントの周囲の組織で炎症が起こる疾患です。
インプラントの周囲が不衛生な状態になると、細菌によって組織に炎症が起こります。
予防のためには、毎日の歯磨きに加えて定期的に歯科でクリーニングを受けて、インプラント周囲を清潔に保つことが必要です。
また、インプラントに過度の負荷がかかることで発症するケースもあります。
かみ合わせなどに問題があったり、歯ぎしりや食いしばりを頻繁に行っていたりすると、過度な負担がかかり歯ぐきに炎症が起こりやすい状態となります。
ほかにも、喫煙をしている方はインプラント周囲炎になるリスクが高いため注意が必要です。
喫煙によって、免疫機能の低下や血流の悪化を招くだけでなく、唾液の分泌量も低下します。
唾液には、お口の中の汚れを洗い流す役割があります。
また、口内の乾燥を防いで細菌の増殖を抑える働きもあり、唾液の分泌量が減ると細菌が増殖しやすい状態となり、インプラント周囲炎にかかるリスクが高まるのです。
インプラント周囲炎が発症すると、歯周病と同じように炎症の範囲が段階的に広がり、重症化してしまうとインプラントを支えている骨が溶かされます。
骨が溶かされると、インプラントを支えられなくなり、食べものを噛むと歯がグラグラするようになります。
インプラントには、天然の歯にはある「歯根膜」が存在しません。
歯根膜は歯の根の周りを覆っている薄い膜で、噛んだときにかかる力をクッションのように吸収・分散し、歯や骨を保護する役割があります。
インプラントのまわりには歯根膜がないため、一般的な歯周病より進行がとても早いのが特徴です。
重症化してしまって、治療を行っても改善されないと判断された場合はインプラントを除去します。
インプラントが破損した場合も、除去が必要となることがあります。
インプラントは、顎の骨に埋める「インプラント体(人工歯根部分)」と、人工歯根と結合して人工歯を支える「アバットメント(支台部分)」、被せものにあたる「人工歯」の3つのパーツで構成されています。
アバットメントや人工歯が破損した場合は修理や交換で対応できますが、インプラント体が破損した場合は除去の検討が必要です。
インプラント体は耐久性の高いチタン製ですので、破損することはほとんどありません。
けれども、強い衝撃やかみ合わせの悪化などで破損する可能性があります。
片方だけで噛むクセがある場合も、注意が必要です。
インプラント体は歯ぐきに埋まっているため、ご自身で状態を確認することはできません。
定期的に歯科でメンテナンスを受けて、インプラントの状態をチェックしましょう。
上顎洞(じょうがくどう)とは上顎の上部、鼻の奥あたりにある骨の空洞部分です。
内部を覆っている粘膜に細菌が入り込むと、上顎洞炎(じょうがくどうえん)が起こります。
上顎骨は下顎骨にくらべて、骨壁が薄く、骨の高さが不足しているケースがあります。
骨が不十分な部分に無理にインプラント体を埋めると、骨を突き抜けて上顎洞にインプラントが入り込んでしまう恐れがあるのです。
インプラント体が入り込んだ状態を「インプラント体の迷入」といいます。
インプラントが迷入したら、
・鼻から膿が出る
・違和感がある
・目の奥の違和感
などの症状が出るため、インプラントを除去する必要があります。
お顔には多くの神経が通っています。
インプラント治療によって、周辺組織を損傷した場合も除去を検討する必要があります。
顎の骨の内部には「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という神経が通っています。
下歯槽神経は、下顎の運動や歯・歯ぐき・粘膜・唇などの感覚を支配している神経です。
インプラントがこの神経を圧迫すると、下顎の周囲の皮膚や口の中の粘膜の感覚に異常をきたします。
しびれや麻痺がある場合は、インプラントが影響している可能性を考えて、インプラントの除去を検討します。
金属アレルギー症状のある方の中には、インプラントを体内に入れることを不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。
インプラント体はチタンで製作されていて、
・ニッケル
・コバルト
・水銀
・パラジウム
・クロム
などの金属は含まれていませんので、金属アレルギーの方でもインプラント治療を行うことはできます。
ただし、ごくまれに、チタンが原因でアレルギーを発症することがあります。
チタンが原因だと確認された場合は、インプラントの除去が必要です。
インプラントを除去する際は、埋入時と同じように局部麻酔を伴う外科手術が必要です。
骨がしっかりとしている状態で除去する際は、歯ぐきをひらいて骨を露出させてから必要に応じて骨を削ってインプラントを摘出します。
インプラント体はネジのような形状をしていますので、専用の機器を使用して埋入時とは逆回転で除去することが可能です。
大部分の骨が溶かされてインプラントが見えているような状態であれば、骨を削らずに引っ張って抜くこともあります。
インプラントを除去した後は、どのようにして歯を補えばいいのでしょうか。
そのままにしておくことはできませんので、もう一度インプラントを入れるか、入れ歯やブリッジなどほかの方法で歯を補うかを選択する必要があります。
インプラントを除去した後の骨の状態がよければ、同じ場所に再びインプラントを入れることが可能です。
ただし、再度インプラントを入れる場合は、前回除去することになった原因を改善できているかが重要です。
たとえば、
・患部の炎症がおさまっていない
・セルフケアが見直されていない
・歯ぎしりや食いしばりの習慣が改善されていない
・喫煙習慣を続けている
といった状態では、再びインプラント治療を行うことはリスクが高いといえます。
骨の量が少ない場合や、患者さんがインプラントを希望しない場合は、ブリッジか入れ歯といった治療をご提案します。
患者さんのご要望やライフスタイルなどを考慮した上で、お一人お一人に合った治療をご提案しますので、どのような治療を行うか一緒に考えましょう。
西宮市の「ケイ歯科クリニック」は、治療前の検査で歯科用CTを使用して、顎の骨の状態などをしっかりと確認しています。
インプラントを入れた後もCT撮影を行って、計画通りインプラント治療が行われたかをチェックしています。
治療後のアフターケアなども充実させて、安定した状態を維持できるようにサポートしていますので、どのようなことでもご相談ください。
当院は、中津浜線沿いにあり、専用の駐車場も完備しています。
阪急今津線「甲東園」駅より徒歩7分と電車でも通いやすい歯科医院です。